エリート外科医といいなり婚前同居
「……だから言ったろ、暁はもうやめとけって」
「うるさいわね……アンタなんかに私の気持ちがわかるわけ……!」
「わかるよ。……少なくとも、好きな人に振り向いてもらえない気持ちはな。だから、暁のマンションを偵察してくるのにも協力したんだ。早く諦めてこっち向いてくんねえかなって思って。……ま、結局全然振り向いてくれそうにないけど」
自嘲気味に自分の気持ちを暴露した橋本に、中村は驚いて目を見開く。
しかし橋本はそれ以上何も言わず、白衣のポケットに手を突っ込んで中庭を去っていき、俺たちふたりを取り残した。
しばらく沈黙が続いたが、それを破るように口を開いたのは中村の方だった。
「……俺のことはさっさと諦めてアイツとくっつけとか思ってるかもしれないけど、無理だから。あんな男好みじゃないし……こう見えて結構本気だったのよ、あなたのことは」
「……別に思ってないよ。橋本の恋が実ろうが散ろうがどうでもいい」
正直なところを告げると、中村は悲し気な瞳をしつつもクスクス笑う。