エリート外科医といいなり婚前同居
「結構冷たいわよね、暁先生って。……彼女以外には」
「そうかな。無意識だけど」
「ホント、あなたの目には彼女しか見えていないのね……悔しいけど負けたわ。あなたへの想いは今後も多少引きずると思うけど、仕事はちゃんとやるから。あなたも変な風に気を遣わないでね」
吹っ切れたような笑みを見せる彼女に、俺も頷いた。
千波を傷つけた件に関しては許せない思いもあるが、中村のことは同僚として信頼も尊敬もしているし、これからもともに仕事をしていきたい優秀な医師であることに変わりはない。
「わかった。じゃあ、俺は行くから」
「はいはい。どこへでも行っちゃって。地の果てでも」
皮肉げな言葉とともに手のひらでしっしっと追い払うような仕草をされ、俺は苦笑しながら彼女に背を向け病院をあとにした。
やっとの思いで千波の家にたどり着き門の前で車を降りると、今さらのように緊張が襲ってきた。
アポなしで来てしまったが、そもそも家にいるのだろうか。いたとしても、出てきてくれなかったら話にならない。俺のことなんて顔も見たくないと思っている可能性も……。
ちゃんと話し合おうと決心したはずが、直前になって怖気づいていたその時。