エリート外科医といいなり婚前同居
「あれ? あなたは……」
背後から聞き覚えのある男の声がして、振り向く。するとそこにはいつかも対峙した、千波の義理の弟になる予定の、白石という男がいた。
……なぜ彼がこの家に。
怪訝そうにする俺に、白石は慌てた様子でスマホを取り出しどこかに電話をかけ始める。
しかし相手が出ない様子で「ああ……くそ」と呟いたかと思うと、突然俺を睨んで言い放つ。
「早くご自宅のマンションに帰ってください! 千波さん、あなたに会いに戻ったんですから!」
「え? 千波が……?」
状況が飲み込めずその場を動こうとしない俺に、白石がしびれを切らしたように詰め寄ってくる。
「この家のアルバムに、ずっと昔に撮られたあなたの写真があって……千波さん、それを見てあなたとの過去を思い出したみたいなんです。それでさっき、マンションに戻るって」
千波が俺を思い出した……。 その事実に息を呑み、余計に会いたい気持ちが募った。
でも、肝心の千波はここにはおらず俺のマンションに向かったらしい。完全に入れ違いだ。
「彼女が出て行ったのはどれくらい前ですか?」
「三十分くらい前です。とにかく早く行ってください! これ以上千波さんを泣かせたら今度こそ俺が奪いますからね」