エリート外科医といいなり婚前同居

それから、マンションのすぐそばにあるスーパーまで、ふたり並んで歩いた。ほんの五分程度だけれど、その間に少しだけ、暁さんのことについて聞くことができた。

今年三十三歳になった暁さんは、心臓専門の外科医。職場はマンションからも近い、循環器に特化した病院だそう。

彼は長い間イギリスに住んでいて、現地の病院でオペの経験を積んでいたらしいけれど、子ども時代を過ごした東京にいつかは戻りたいと思っていて、今回それが叶って帰国できたのだそうだ。

「久々の東京はどうですか? 昔と変わってますか?」

中学の途中までは東京にいたという彼。それから二十年近くが経ってしまっているけど、どんな印象を持ったのか気になって聞いてみる。

暁さんは周囲の景色をゆっくり見回してから、穏やかな声音で話した。

「いや、あまり変わってなくてホッとしてる。建物は変わってしまったところもあるけど、空気とか匂いとか、そういうのは変わってない。……あと、人も」

最後の言葉とともに、なぜか優しい眼差しで見下ろされて、私は首を傾げつつ尋ねる。



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