エリート外科医といいなり婚前同居

「ありがとう。思い出してもらうまで、頑張るよ」

「は、はい……。頑張って、ください」

いや、そうじゃなくて……。暁さん、この手は、なんですか?

そう聞きたいのに声にならず、私たちは結局手を繋いだままの状態でスーパーに入ることになってしまった。

そして店内でも、暁さんが私の手を離す様子はなく……。

「千波さん、なにが好き?」

「え? いや、私の好みより、暁さんの好きなものを……」

「じゃあ、今日は俺の好きなもの。明日は千波さんの好きなものにしよう」

買い物の間中、暁さんがそんな無邪気な会話ばかりしてくるので、自分の状況がますますわからなくなる。

大人の男女が手を繋いで、今日の晩御飯の相談をしながらスーパーを歩いてるって……はたから見たら、付き合いたてのカップルか、新婚ホヤホヤの夫婦かという感じだろう。

でも私たち、そのどちらでもないんだけど……。

暁さんの奔放な振る舞いに、無駄にドキドキさせられること数十分。私たちはやっとレジに並ぶことができた。

支払いの時に彼が使ったのは、このスーパーや系列店で使えるプリペイドカードで、私も今後それを使って食材や日用品を買えばいいとのことだった。



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