エリート外科医といいなり婚前同居
無事に買い物を済ませてマンションに帰ってくると、暁さんには先にお風呂をすすめて、なんとかキッチンでひとりになることに成功した。
私は買ったものを冷蔵庫に詰め終わると、脱力して床に座り込む。
帰る時までずっと彼の手と繋がれていた自分の右手に触れると、妙に熱くてジンジンしている。
「……なんだったの、今の買い物」
ぽつりと呟いてみるけれど、ひとりの部屋で答えが返ってくるはずもなく。
……余計なことは忘れて料理に集中しよう。そう決意し、彼の好物だというブリに下味をつけ始めるのだった。
お風呂から上がった暁さんは、ダイニングテーブルに並んだ夕食に感激し、背筋を伸ばして席に着くと、とても礼儀正しく両手を合わせ「いただきます」と言ってくれた。
メニューは主菜のブリの照り焼きのほか、里芋とイカの煮物、茄子のみそ炒め、ダイコンと油揚げのお味噌汁、そして白いご飯と、純和風にしてみた。
「うまい。やっぱり誰かに作ってもらうのはいいな……」
咀嚼するたび、たまらなく嬉しそうに目を閉じそんなことを呟く彼を大げさだとも思ったけれど、料理を褒められて悪い気はしなかった。