エリート外科医といいなり婚前同居

その翌週、カレンダーが十二月に変わってすぐの晴れた午後。

私は大学の授業後に、自分の雇い主になるであろう人物と待ち合わせをしていた。

有能な外科医である彼はとても多忙らしく、待ち合わせ場所に指定されたのは彼の自宅マンション。

父に渡された住所のメモを手に、最寄り駅から歩くこと数分。私は目的地に到着すると、目の前の巨大なビルを見上げてぽかんと大きな口を開けた。

『駅からずっと見えてるビルだから、地図は要らない』

家で父からそう聞かされ半信半疑だったけど、まさかこんなに目立つビルだったとは。

「ほ、ほんとに……ここ、でいいんだよね」

都心の一等地にそびえる巨大な摩天楼は、傾きかけた低い日差しを受けて輝いている。

私はその眩しさに目を細めながら、お医者様って儲かるんだなぁ……なんて、他人事のように思ってしまった。

自分の父だって医者だけど、地域に密着した開業医だし、自宅はごく普通の一軒家。

私も中学までは公立の学校に通っていたし、そこまで〝医者の娘!〟というようなセレブ生活をしてきたわけじゃないから、こんな高級マンションに入るのは気後れしてしまう。

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