エリート外科医といいなり婚前同居
そんなことを考えながら、三十五階に到着し、いざ雇い主の部屋へ。緊張しながらドアの前に立ってインターホンを押すと、『はい』と男性が応対した。
少しハスキーな低い声……この人が、暁さんかな。
「あの、家政婦の仕事のことで参りました」
『ああ、鍵なら開いてるから入ってください』
そっけなく言われ、インターホンは切れてしまう。
それにしても鍵を開けているとは不用心な。まぁ、下のエントランスで怪しい人は門前払いされるだろうし、平気なのだろう。
「お邪魔します」
遠慮がちに言いながらそっとドアを開け、玄関に足を踏み入れたその瞬間、私は目に飛び込んできた光景に、ぎょっとした。
「ちょっと、なにこれ……」
地震が起きたか、泥棒に物色されたか、というような感じで、玄関の床に大量の靴が散乱している。足の踏み場もないほどだ。
よく見ると靴ひとつひとつは決して汚れているわけではないし、むしろ高そうな革靴やおしゃれなスニーカーばかり。なのにすべてが脱ぎっぱなしで、出しっぱなし。
私はいったいどこに自分の靴を置けばいいの……。