エリート外科医といいなり婚前同居

「あーかっつき!」

「なんだよ橋本。その気味の悪い笑顔は」

数日後、医局で帰り支度をしているとやけに上機嫌の橋本に絡まれた。

「今日ヒマか?」

「……いや、ヒマじゃない。一刻も早く家に帰って千波の顔を見るという重要な予定がある」

冷たくあしらいつつ、白衣を脱いでバッグを手に持つ。
そのまま「じゃ」と言い残し、橋本の脇をすり抜けようとしたのだが、しつこい橋本は俺の前に立ちはだかって引き留める。

「待て待て。それヒマっつーんだよ! なぁなぁ、今夜お前のマンション行ってもいいか?」

「はっ? なんだよいきなり」

怪訝な顔をする俺に、橋本はにっこり笑みを深めて言う。

「見てみたいんだよ、病院では女に対してクールなお前が、ベタ惚れになるほどの可愛い家政婦さん」

「断る。千波は見世物じゃない」

「……つれないヤツだな。じゃあ、これと引き換えにってのはどうだ?」

橋本が突然、後ろ手に隠していた物を俺の目の前に差し出した。

手のひらサイズの真っ赤な缶、英字のラベル……これは、まさか。

「英国王室御用達の紅茶専門店プレミアムリーブスのクリスマス限定ブレンド……」

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