エリート外科医といいなり婚前同居

ニットワンピースに黒のタイツという服装に、俺が贈ったのとはまた別のシンプルなエプロンをつけている千波が、ぺこりと頭を下げた。

いつもなら、その可愛い姿に辛抱たまらず抱きつくことができるのに、今日は橋本という邪魔者がいるのでそれが叶わず、若干の欲求不満が胸にくすぶる。

「こちらこそ、初めまして。暁の同僚、橋本修平です。……いや~、予想よりもずっと可愛い家政婦さんでびっくりだな。暁が調教したくなるのもわか――」

橋本が余計なことを口走りそうになったので、ジロッと睨んで黙らせてから、千波の方へ向き直る。

「千波、こっちはいいから、料理の準備を頼む」

「あ、はいっ。お酒は、橋本さんだけ飲まれるんですよね?」

「そーですー。俺はこいつみたいに〝暁先生にしかできないオペ〟みたいのはないんで、急に呼び出されることも少ないし」

若干嫌みっぽくそんなことを言う橋本に、千波は純粋な瞳を向けて語り掛ける。

「でも、橋本さんも同じ心臓外科医なんですよね? 誰にでもできる仕事じゃないですし、毎日たくさんの患者さんを助けていること、尊敬します。……あっ、すみませんつい長々と。今日はゆっくりしていってくださいね!」

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