エリート外科医といいなり婚前同居
「あ~……下手な店よりうまい。最高の家政婦ですよ千波さん」
「いえ、そんな……。橋本さんのお口に合ってよかったです」
「どうですか、千波さんも一杯。酒、飲めないわけじゃないんでしょ?」
向かい側から橋本がボトルをずいっと千波の方へ差し出し、困り顔の千波が隣に座る俺を見る。
もし俺に遠慮しているんだったら、気にしなくていいんだが。
「そういえば酒を飲む姿はあまり見たことがないけど、千波、飲めるのか?」
「ええと……人並みですかね。でも、ワインはあまり飲んだことがなくて」
「じゃあ飲みましょう! これ、赤だけどわりと軽い口当たりですから」
しつこくワインをすすめる橋本に少し苛立って、俺はつい口をはさんだ。
「橋本、無理にすすめるな」
「お前な、自分だけ飲めないからって拗ねるなよな」
「別に拗ねてなんか……」
そんな俺たちのやり取りが険悪なものに見えたらしく、千波は慌てて空のグラスを手に取り、取り繕うように橋本に笑いかけた。
「じゃ、じゃあ、一杯だけいただきますね……!」
「そうこなくちゃ! はい、どうぞ~」