雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません
陽和「(あれ、待って、この顔をどこかで、最近……)」
また何かを思い出したような気がする陽和。
だけど、記憶を引っ張り出そうとすればするほど、頭に靄がかかる。
意外にも(?)雨宮は子供の扱いが上手いようだ。
もともと人懐っこい唯和は一瞬で仲良くなり、生意気盛りの陸ともゲームの話で会話が弾んでいる。
雨宮に対して不信感を持っていた匠も、この前の一件ですっかり気を許したようで、正式に事務所に入ったことを報告していた。
匠「じゃぁ、僕たちはお母さんのところに行くね」
陽和「え、私も行くよ」
匠「お姉ちゃんは、社長さんの傍にいてあげなよ。まだ熱があるんだし」
陸「そうだよ、病人を放って行くなんて冷めてぇーな、お姉ちゃん」
陽和「でも」
ゆいゆい「しゃちょーさん、またね! ひぃたんバイバイー」
陽和「え、あの」
兄弟たちに置いていかれた陽和は、しばし呆然とその姿を見送った。
リビングに戻ると、唯和と陸が散らかした部屋を雨宮が片づけている。
陽和「あ――!すみません、私がやります」
雨宮「ん、あぁ、別にこれくらい」
陽和「だめです!社長は病人なんだから横になってください。というか、すみません、大勢で押し掛けて。逆に疲れてしまいましたよね」
雨宮「いや、別に。むしろ楽しかった」
陽和「子供好きなんですね」
雨宮「子供は純粋だからな。たとえ嘘をついても、すぐにバレるものしかつかない。そこに計算はないし、卑怯さもない」
陽和「……社長?」
何だか急に悲しい顔をしたような気がして、陽和は雨宮が心配になった。
部屋の中は祭りが終わった後のように、しーんとしている。
そこで、ふと。
陽和は秘書課の人たちに聞いた雨宮の女性遍歴を思い出した。
社長って、もしかして人間不信なのかな……?