雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません
雨宮「何かと接触してくると言えば、」

ふと、思い出したように雨宮が陽和の方を向く。

陽和「何ですか?」
雨宮「今朝、立花と何を話していたんだ?」
陽和「あぁ、あれは……飲みに行こうと誘われてて」
雨宮「それで?」
陽和「断りたいんですけど、同僚なので」

角が立たないように断る方法はないのか、陽和はそんなことを考えていた。
せっかく就職できた職場、できれば険悪な雰囲気は避けたい。
―――が、

雨宮「立花め、あいつも接触禁止令だな」
陽和「え?」
雨宮「いいか、ひよこ」

雨宮が陽和の両肩に手を乗せる。
そのとき、思い出せそうで思い出せなかった記憶が、不意によみがえった。

雨宮「立花に誘われても今後一切断れよ」
陽和「(無言で何度もうなずく)」

陽和は顔が赤くなるのを抑えられなかった。
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