大嫌い、だから恋人になる
俺は完璧じゃない。

ただ春香さんに釣り合おうと思って、必死に勉強にスポーツに打ち込んだだけだ。

春香さんと隣を歩ける男になりたくて、髪型を変えたり、男なのに美容のことを研究した。春香さんが好みそうな会話をして、春香さんが好きそうな本を読んで、春香さんが好きそうな映画を見て、春香さんが好きそうな男になりたかった。

そうやって出来たのが、秋山玲と言う男だ。

女の子にはいつも優しくて、運動も勉強も出来て、クラスで一番の人気者でなくちゃいけない。

でもこの二か月は少し違った。

ちひろの前に居ると、そういうことは一切、考えなかった。だからとても楽だった。怒ったり、笑ったり、全部自然に出来た。春香さん相手に、遊園地なんて行けないし、からかったり、ちょっとイジワルしたりなんて、絶対に出来ない。

俺はそういう自分が嫌いじゃなかった。
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