ヴィーナスパニック
しかし私だけが反応が遅れてしまった。
一応慌てて隠したものの、
『あはは〜クマさんだ可愛い〜』
そんな能天気な声が、校舎横の花壇の近くから聞こえてきたのだ。
光の速さでそっちに振り返る。
だって私はその日、クマさん柄のパンツを履いていたから。
見られた!
そう思った。
十メートル先くらいにある花壇の側で地べたに座って、私のパンツの柄を暴露してくれたのがあの青髪メイク男子だったはず。
死ぬほど恥ずかしかったから記憶は朧げだけど、あの時は薄ピンクだった気がする。
髪色が違ってたから、さっきは気づけなかった。
そして確かその時、彼の横に浅葱くんもいた。
……何も言われなかったけど、ばっちり目だけは合ったんだ。
そこから茹でダコみたいに顔を真っ赤にしながら、逃げ帰ったっけ……。
クマさんパンツだけは死守したかった……。
封印しておくべきだった回想から、現実へと戻る。
「なんだ、立花」
「いえ、何でもないです……」
変な声を挙げたから、先生に注意されてしまった。
思い出さなくていいことを思い出したうえにそれで怒られるとか、本当に今日の運勢どうなってるんだ。
全部私が悪いんだけども。
ため息を落として、ノートを開いた。
――あれ?
使い慣れてるはずのノートに、違和感がじわりと押し寄せる。
違和感と共に嫌な予感までもが、私に忍び寄ってきた。
最初からページを、ザーッとめくってみる。
そこに書いてあったのは猫なのか犬なのか豚なのか、もう地球上に存在するのかどうかも疑わしい斬新な生き物のイラストばかりで。
授業の内容に関するものなんか、一つもない。
というか、文字が一個もない!!
おかしい。
これ……私のノートじゃない。