ヴィーナスパニック
何度も何度も、ノートを頭からお尻から往復してめくる。これは自分のノートのはずなんだから、そう言い聞かせて。
だけどどれだけ見直しても、描かれてるのは『ぼえ〜』というセリフを吐く謎の生物だけだ。何だこれ。
……やっぱり、これは他人のものだ。
っていうか、表紙に書いてるはずの私の名前がない。
教室を出た時は、確かに私のノートだった。
どうして?一体どこで入れ替わっ――
「ああっ!あのとき!?」
驚きがそのまま口から飛び出す。
「さっきから何なんだ立花!」
「す、すみません」
うう、また先生に怒られたしみんなに睨まれてしまった……さなちんは心配そうにしてるし。
三年のこの時期にボヤッとしてるのはダメだよね……。
にしても、なんてこったと頭を抱える。
どうやら浅葱くんと衝突した時に、取り違えたらしい。
そういえば、あの人も勉強道具一式を手に持ってたな……不良なのに。なんだかアンバランスな組み合わせ。
このノートには持ち主の名前は書かれていないけど、絶対浅葱くんのだ。
どうしよう。
さっきのアレが何事もなく終わって安堵したのも束の間、また接触しないといけないなんて。
チャイムが鳴って、授業が終わった。