ヴィーナスパニック

嘘でしょ!?
なんで、なんで……来ちゃったのよおおぉ!!

浅葱くん!!


私の“こっそりひっそり作戦”は容易く崩れ去った。


「え……今、すみれの名前呼んでたよね?すみれ、浅葱くんと知り合いなの?」


さなちんが声を潜めて私に問いかける。

そうだ、なんで私の名前――あ、ノートに書いてたからか。

他の生徒もみんな私が何を発するか、固唾を飲んで見守っている。
そりゃそうだ、私と浅葱くんなんて肉まんとキャビアくらいの意味わからん組み合わせだもん。


“立花さん何かしたのかな”

“カツアゲ?やだ〜可哀想”

なんて、ひそひそ声も聞こえてくる。

カツアゲってこんな堂々とするもんなの!?


「お前だろ、さっきぶつかってきた女」

「ぎゃー!!」


い、いつの間にか近くまで来てるし!!

机のすぐ横に立つ浅葱くんが、私を見下ろしている。大きいから壁のようだ。
真顔の彼からは何の感情も、読み取れない。


「『ぎゃー』ってなんだよ、俺は化けもんか。それよりお前に話がある。ついてこいよ」

「へ!?何で!?ノートだよね、返すよ今すぐ!はい!!」


わけがわかんない!話?浅葱くんが私に何の話が!?

注目されるのが苦手な私にはこの状況から一刻も早く脱したくて、机の中から浅葱くんの物であろうノートを出して彼に押し付けた。

あ、あとは君がその手に持ってるノートを返してくれさえすれば終了なんだから!
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