モンスターハンタールチフェル
 震える声でルチナは言いながら歩き出した。

 そして、二、三歩歩いたと思ったら突然立ち止まってしまった。

「どうしたルチ…!?」

 アレックが後ろから声を掛けたとたん、バキバキッという音が聞こえて来た。

 そしてルチナは声に出さずに右腕を持ち上げて空を差した。

 アレックたちはその指し示す方へと視線を向けると、一同は声を失ってしまった。

 なんと垂直に切り立った十五メートルほどの雪の壁の上に、大きな真っ黒の影があったのだ。

 それはどこか毛の無いドーベル犬のように見えて、顔はタカのように鋭い感じがあり、尾は細く長い鞭のようであった。

 そして何よりも龍であることを証明する翼は自分の体を覆うほど大きくかったのだ。

 月明かりに照らされていてどうにか判別できた事だが、その龍全身を覆う皮膚のような物は全て金属質の鱗や甲殻だったのだ。

 そう、この全身が黒く見えるのは全て、皮膚を覆っている鱗や甲殻が長い年月を経て空気に触れさせたせいで、酸化反応を起こして錆びたからだった。
< 274 / 645 >

この作品をシェア

pagetop