My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
子供達が集まるまでの間、特にすることがない私達はライゼちゃんの家事を手伝っていた。
ライゼちゃんは遠慮したけれど、これから何日かお世話になるのに何もしないわけにはいかない。
ラウト君とヴィルトさんは一度家に戻っていた。
私は今セリーンと一緒に昨夜使った敷布を真上からさんさんと降り注ぐ陽の下に干していた。
それだけの作業で額から止め処なく汗が伝う。
ラグはそれに参加するはずも無く、木陰で胡坐をかき先ほどから気持ち良さそうに船を漕いでいる。
それを横目で見て少しむっとするが、昨夜遅くまで付き合ってもらった手前何も言えなかった。
それから間もなくしてライゼちゃんが今度はお昼ごはんを作ってくれた。
ラウト君の提案でお昼は皆で外で食べることになり、私は美味しい手料理を口にしながら、ずっと気になっていたことを皆に訊いてみることにした。
「みんなって、本当に歌聴いたこと無いの? 一度も?」
「はい。私はあの時のカノンさんの歌が初めてでした」
「僕も~」
ライゼちゃんと口をもぐもぐ動かしたラウト君が答えてくれた。
「でも、この世界にはセイレーンって人たちがいるんでしょ? ラグ」
「あ?」
ラグが料理を取る手を止め私を見る。
「あぁ、いるっつっても今はほとんどいないよーなもんだ」
「……どういうこと?」
「歌を使うセイレーンが普通の街で普通に暮らしていけると思うか?」
「あ、」
そうだ。
歌が不吉とされているこの世界で、その人たちが普通に生活していけるわけがない。
それは私がこの世界に来てすぐに身を持って知ったことだ。