My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「でも、『今は』ってことは昔はセイレーンの人たちが普通に歌ってたってこと?」
「らしいけどな。オレも詳しくは知らねぇ」
「だが、今もどこかにセイレーン達が暮らす秘境があると聞いたことがある」
「え!?」
セリーンの抑揚の無い台詞に私は声を上げる。
「それってどこにあるの!?」
「それはわからない。あくまで噂だ。それをどこで聞いたかも忘れてしまった」
私は気づかないうちに上がっていた肩をゆっくりと下ろす。
(セイレーン達の秘境……)
本当にあるのなら、その人たちに会ってみたいと思った。
どんな人たちなのだろう。どんな歌を歌うのだろう。
そして、歌が不吉とされているこの世界をどう思っているのだろう……。
「なんで、歌が不吉ってことになったんだろう」
「だから言っただろ。銀のセイレーンが世界を破滅させるって言い伝えがあるからだ」
「でも、昔はセイレーンの人たちが歌ってたんでしょ? それってどのくらい昔なの?」
「知るか!」
ラグはイラついたように私から目線を外し、料理を口に押し込んだ。
……これ以上は答えてくれなさそうだ。
「ヴィルトさんも、歌、聴いたこと無いですか?」
この場で最年長のヴィルトさんにも訊いてみる。だが。
「あぁ。無い、な」
低く答えてくれたヴィルトさんに私は小さく嘆息する。