My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

 ラグは最初のうちずっとカルダに会いに行くことを反対していた。でもあの農園を見たら急に怒りだし自分からカルダの元へと向かっていった。
 やはりあの放火が許せなかったのだろうか。
 だが、ため息とともに返ってきた答えは意外なものだった。

「テテオの収穫が減ると面倒なんだよ」
「え?」
「あの実で作った食いものが異様に好きな奴がいてな、無くなると大騒ぎしやがんだ。っとに、余計なことしやがって」

(……テテオの実で作ったって、ライゼちゃんが言ってた甘いお菓子のことだよね)

 言い方からして、きっと親しい人物なのだろう。ストレッタにいる人だろうか?
 なんとなく直感で、女の子なような気がした。

(ひょっとして、ラグの大事な人だったり?)

 しかしそうだったとしても、あの時の彼の怒りようは――。
 私はそこで小さく首を振る。
 きっと、今はこれ以上の答えは聞けないだろう。
 私はラグの背中を見つめながら、もう一度笑顔で言った。

「でも、ラグが来てくれて良かった。本当にありがとう」





「村が見えてきたぞ」

 セリーンの声にラグの向こうへ視線をやると、村と、そして他とは明らかに違う色となった農園が見えた。
 カルダのことは解決しても、あの農園はすぐには元に戻らない。またあの実が出来るようになるまでに、一体どれだけの時間が必要になるのだろう。
 改めて身勝手な理由で農園に火を付けたカルダに強い怒りを感じた。

 と、村の入り口に近づいたときだ。

「オレは先にあいつらの家の方に戻ってる」
「え!?」

 ラグが急に進路を変え、村ではなくその脇に広がる森の方へと歩いていき驚く。
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