My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「なんで!? ラグも一緒にライゼちゃん達に……」
「めんどくさい」
きっぱりと言われて一瞬唖然となる。
しかし彼の足は止まらない。
「で、でも戻り方わかるの!? 森の中で迷子になったりとか」
「お前と一緒にするな。……最悪、こいつを起こせばいい」
自分の後ろ髪を軽く指差しながらすたすたと森の中へと入っていく彼を、私は少しの間ぽかんと見送っていた。
「放っておけ。これで私たちより遅く戻ったら思いきり笑ってやればいい」
「う、うん……」
これからライゼちゃんに色々と説明するのにラグがいた方が助かるのだが、仕方がない。
そして再びベレーベントの村に足を踏み入れた私とセリーン。
いまだ焦げた臭いの漂う農園をやりきれない想いで通り過ぎてすぐ、広場にライゼちゃんの姿を見つけた。
でも、同時に彼女の前に集まった人々に気づき、足を止める。
「どうした、報告するのだろう?」
背後のセリーンに言われても私の足は動かない。
集まっている人々はその数から見てこのベレーベントの村人全員に思えた。
ざっと50人くらいだろうか。女性と老人がそのほとんどで、聞いていた通り若者が極端に少ない。
きっと、あの中に昨夜クラール君の家から逃げて行った子供たちの母親もいるはずだ。
混乱の原因である私が、フラフラ出て行ってしまって平気だろうか。
ライゼちゃんの説得は上手くいったのだろうか。
と、そのとき突然「あー!」という高い声が上がった。
「おねえさんたち帰ってきたよー!!」
こちらを指さしてはしゃいだような声を上げたのは一人の女の子だった。
一斉に皆の視線がこちらに集まりどきりとする。でも。
「ホントだ! お姉さーん!!」
「おかえりなさーい!!」
昨日テントの中で一緒に歌ってくれた子たちだろう。見覚えのある子供たちが嬉しそうにこちらに手を振ってくれている。
誰もそれを咎めたり、逃げていったりしない。
ぽんっと肩に手を置かれた。
「ほら、行くぞ」
セリーンが微笑んでいた。