偽婚
「神藤さんから!?」


驚いて、思わず声を上げたら、また体中に痛みが走った。

高峰さんは、そんな私を落ち着かせるようにしながら、言う。



「俺も事故のこと聞いて、びっくりしたよ。さっき、ちょっとだけ神藤と会ったけど、あいつもずいぶん顔色が悪かった。トラウマだろうけど、さすがに参ってたよ」

「………」

「で、まぁ、こういう時こそ弁護士の出番だろ? 交通事故関係はあんまり経験ないけど、力になれることはあると思うから。何でも頼ってな」


確かに、わらないことばかりだし、専門家がいるのは頼もしい。

私は意を決して、高峰さんに聞いた。



「ねぇ、私以外の人はどうなったの?」

「え?」

「運転してた人とか、私の目の前に倒れてた人とか。看護師さんに聞いたけど、別の病院に運ばれた人のことはわからないみたいで」


目を瞑れば、あの時の残像がまだリアルに広がる。

私は奇跡的に助かったけれど、でも他の人はどうなってしまったのか。


私の問いに、高峰さんは少し迷いながらも、教えてくれた。



「俺も詳しくはわからないけど、亡くなった人はいないよ。でも運転手と、車に轢かれた人は、まだ意識不明みたいだ」

「意識不明……」

「杏奈ちゃんは、あの中では一番遠いところにいたから、それくらいの傷で済んだみたいだけど、他の人たちは重症らしい。今朝の全国ニュースのトップだったよ」


全国ニュース。

それがどれほどのことなのかは、想像できる。



「でも、意識不明なら、まだ望みはあるよね?」

「そうだな。みんなちゃんと、助かってほしいよな」
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