偽婚
さすがにまずい。

慌てて大声を出す私。



「し、神藤さん!」


声に驚き、神藤さんは完全に目を開けた。



「ん? あぁ、俺、寝てたのか」

「何回も起こしたんだよ? ほんとに疲れてたんだね」


平静を装いながら体を離すが、内心パニック状態だ。


『美嘉』って誰?

神藤さんが、寝ぼけてキスしようとした相手。



「何か変な夢見てた」

「エロいやつ?」

「バーカ」


言いながらも、神藤さんの顔色は悪い。

それは、疲れているからなのか、それとも『変な夢』の所為なのか。


また思い出したように鼓動が速くなり始める。



「俺も風呂入ってくるよ」

「あ、うん。いってらっしゃい」


神藤さんを送り出してから、私は大きなため息を吐いた。



よく考えたら、一晩、私たちは同じ部屋で過ごすのだ。

普段、一緒に暮らしてるわけだし、恋愛感情なんてないから大丈夫だと思っていたが、でも男と女は何が起こるかわからない。


やっぱり旅行なんてくるべきじゃなかったかなと、今更思ってももう遅かった。

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