加納欄の受難 シリーズ1 シーズン1
バカって、言った?



 ものの数分で大山先輩は戻ってきたが、そのあとは一言も話さず無言で車を発進させた。

 オモ~イ空気が車内を漂っていた。

「南署より003」

 無線が鳴った。

「こちら003大山」

 低い冷たい声が無線機に発せられた。

「高遠さんの意識が回復したと連絡がありました」

 大山先輩は小さくガッツポーズをした。

「大山了解」



・・・ヨカッタァ(:_;)



「お」

 大山先輩を呼ぼうとして、声が出なくなった。

 あたしは、慌てて大山先輩の横顔から目をそらし、真っ正面を見た。



・・・なんで?



あたし、変に意識してる?



今まで通りにしなくちゃ。



今まで通り。



そう思えば思うほどできそうになかった。



そうだ!



今なら、師範の事話せるかも。



「大山先輩?あの、し、師範のことですけど・・・」

 あたしは、前置きなしに話しはじめた。

 一瞬大山先輩の手がビクッと動いた感じがしたが、気のせいだと思った。

 大山先輩は何も言ってくれなかった。

 あたしは、そのまま話を続けた。

「師範は、私が中国にいた時の親代わりで、武術の達人でもあったから、私も小さい頃からいろいろ教えこまれたんです。武道家としては尊敬してますけど、本当に、それだけで・・・」

「・・・・・・」

 大山先輩は、無言で運転をしていた。

 そして。

「いいんじゃねぇの?別に。尊敬してる奴なら、尊敬以外の感情も生まれるよな。悪いことじゃないと思うぜ」

 と、言った。



・・・ナニ?



「尊敬以外の感情って。なん、ですか?」

「・・・・・・」

「私が、師範に特別な感情を持ってるって、言ってるんですか!?」



何でそんなふうに考えるの?!



「実際そういう関係だったんだろ?」

「え?」



知ってる、の?



臆測なの?



「いいじゃねぇか。昔の男に会ったからって、動揺することねぇじゃん・・・」

 そして、一呼吸して、こう付け加えた。

「俺には、関係ねぇしな」

 一瞬、自分が違う世界にトリップした感じがした。



カンケイナイ・・・?




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