加納欄の受難 シリーズ1 シーズン1
「まぁ彼には、逆の事を伝えてしまったんですけどね」



えっ?!



逆?!



「欄から私を誘ったと伝えたんです」



誘った・・・?



「欄は私を『愛している』と伝えたんです。笑っちゃいますよね。毎日泣き叫んで、嫌がるお前を楽しんでいたのに。それが楽しくてお前を抱いていたのに」

「いやっ!」

「抵抗する欄を抱くのは最高に興奮しましたよ」

「やめて・・・」

 あたしの頭の中に、あの時の記憶が蘇る。

 どんなに抵抗しても敵わず、師範に凌辱をうけていた日々。

 毎日、精神的にも肉体的にも傷付いていった日々。

 二度と思い出したくない記憶・・・。

「あの刑事さんが、あまりにポーカーフェイスを気取るので、ちょっと揺さぶっただけですよ。私との事も、隠すようなことでもないですよね?」

 あの時の大山先輩を思い出していた。



・・・だから、あんな事したんですか?



・・・師範の嘘に騙されて(__)



なんで・・・?



 あたしのケータイが突然鳴った。



あ!



苫利先輩!



 あたしは、師範を睨んだ。

 師範は肩をすくめて。

「どうぞ」

 と言った。

 あたしは、右手でポケットからケータイを出して電話に出た。

「はい、加納です」

「欄ちゃん?どこにいるんだよ!さっきから本堂4丁目で待ってるんだぞ!」

 苫利先輩のイライラしている声が伝わって来た。

「すみません。今・・・」

 と、言ってあたしは、話を止めた。

 師範が拳銃をあたしに突き付けたのだ。

「何?今、どこ?」

「・・・ちょっとしたトラブルです。先に行ってもらってもいいですか?」

「トラブル?」

「自動販売機でコーヒーを買おうとしてた人が、その前にいたオジサンと口論になっちゃって、仲裁に入ってるんです」

「そんなの、ほっとけよ!」

「ほっとけませんよ!オジサン怖いんですもん。可哀想じゃないですか!」

「とにかく、早く来いよ!」

「・・・わかりました」



・・・伝わるだろうか。



こんな会話で。



師範に気付かれずに。



とっさに言ったけど、苫利先輩には理解出来ないことだ。


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