私の中におっさん(魔王)がいる。
第一章・召喚されました。
「なんでもっと早く起こしてくれないの!?」
半べそをかきながら、私は家を飛び出した。車に乗り込む途中のお母さんに八つ当たりすると、お母さんは呆れながら、
「何回も起こしたわよ!」
と、口調を強めた。
「気をつけて行くのよ!」
「うるさいなぁ! 分かってるよ! 行ってきまーす! お母さんも気をつけてね」
走りながら手を振ると、お母さんは笑って手を振りかえした。
お母さんは私が高校に入学した年に仕事に復帰した。ってことは、もう一年前になるのか……。バリバリのキャリアウーマンだったらしいお母さんは、今も結構会社に頼りにされてるみたい。もちろん結婚前とは別の会社だけど。
私はそれがわりと誇らしかったりしちゃうんだなぁ。言わないけどね。
「うわああ……。それにしても、また遅刻だよぉ!」
全速力で足を動かす。それこそ、死に物狂い。
私、なんでこんなに寝るのが好きなんだろう。あとが大変って分かってるのに、中々目覚ましどおりに起きれない。この寝坊癖だけは、一生治りそうもない。
「ゆり! まぁた遅刻か?」
突然背後から、からかう声が響いた。振り返りざまに自転車が通り過ぎて行く。