私の中におっさん(魔王)がいる。
「ですが現在は山賊を解散し、花野井は岐附の将軍をしております」
「あっ、そうなんですね」

 良かった。昔の話なんだ。

「私も彼率いる軍の参謀をさせていただいております」
「将軍……というと?」
「将軍は一万を越える兵を動かせる人物のことです。次いで、三関(さんせき)、小関(しょうせき)、乎関(こせき)、関(せき)、百兵長(ひゃくへいちょう)と続きます」
「じゃあ、軍では将軍が一番偉いんですね」
「いいえ。軍での最高位は、烈将軍(れつしょうぐん)ですね。十万を超える兵の指揮を任された者で、大抵は将軍から選ばれます。ですが、世界史の中では優秀な軍師や参謀から選ばれたこともあるようですよ。まあ、稀なことでしょうけど」
「へえ。すごいですね」

 でも、十万って言われても想像つかないなぁ。

「今、岐腑は誰が烈将軍なんですか?」

 何気なく聞いたら、月鵬さんは困った顔をした。

「おりませんね」
「え?」
「烈将軍は、戦争が激化してから、もしくはそう予測立てた時に任命されるものなんです。だから、今はおりません。三年前まではカシラ――花野井が就いておりましたが、何分ご自身で戦われることを好まれる方なので、実質は別の将軍が務めておりました。まあ、言っては何ですが、お飾りでしたが」

 思わず、といった感じで、月鵬さんは苦笑を漏らした。

「すごいですね!」
「いえ、うちは将軍の数が少ないので、消去法です。しかもかなり特殊だったと思います」

 月鵬さんは柔らかく笑う。でも、どこか悲しそう。
 不思議に思うと同時に、聞き逃してた言葉が頭を巡った。〝三年前までは烈将軍がいた〝――ってことは、
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