私の中におっさん(魔王)がいる。
第七章・とある事件が発生しました。
 私が食事を終え、障子を開けると日が陰ってきていた。もうすぐ夕方だ。この部屋に居ても暇だし、ふらふらと屋敷でも見て回ろうかな。ちょっと誰かと話もしたいし。
 障子を閉めて、適当な襖を開けると廊下が真っ直ぐに伸びていた。煌々と燃えるランプの光がなんとなく幻想的で、廊下を緋色に彩っている。

 そっと廊下に踏み出した。
 歩いてれば誰かに会えると軽く思ってたのに、数十分しても誰とも行き会わない。部屋の中からは、なんとなく気配を感じる気がするのに……。室内の景色も、まるで変わらない。

(なんかおかしい)

 不意に不安が過ぎったとき、突き当りの廊下を雪村くんと風間さんが横切った。

(良かった!)

 二人は、廊下の先の縁側から庭先に出て行く。私は後を追った。
 縁側に置いてある最後の下駄を履いて、そのまま庭を突っ切る。二人に声をかけようとしたとき、見覚えのある門が現れた。

 私が屋敷を抜け出すときに通った門だ。たしか、青龍の門とかいう。その門の前に二人は立っていた。

 なんとなく様子を見てると、雪村くんが不意に両手の人差し指と中指を合わせた。そして、眼を閉じると、真剣な顔つきになる。

「ふう……ふう……」

 深く深呼吸をする音が聞こえる。
 四回も聴こえないうちに、その音が別の音へと変わった。

「ヒュー、ヒュー」

 隙間風が耳を鳴らすような音が聞こえる。雪村くんの喉の奥からみたい。不思議に思っていると、突然、門の中心が歪んだ。
(目の調子悪いのかな?)
 目を擦るけど、歪みは直らない。首を傾げた瞬間、甲高く、鋭い音が鳴って、空気が引っ張られたようにピンと張ったのを感じた。
 それと同時に門の歪みが消えた。
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