Fall -誘拐-


―――――― 


“ドラマチック”と“平凡”の境界線がもしあるとしたら、僕は完全に右の人間だった。


特殊とは程遠い一般家庭で育って、

甘酸っぱくもなく、
青くもない学生生活を送り、


将来は平凡な社会人になるんだろうなと・・・

もう自分が辿る人生のレールは敷かれているんだろうなと感じていた。


そんな高校1年のある日、

従兄弟の兄ちゃんが連れていってくれた松山千春のライブ。


1人でチケット握りしめて参加した吉田拓郎弾き語りコンサート。


受け身だった感受性が、
反旗を翻していくのを実感した。


気付けば・・溜めっぱなしでずっと使っていなかったお年玉貯金を下ろして、

楽器屋へ足を運んでいた。


叱られるまで近所の公園でずっと弦を弾いていた。


どこへ向かっていくのか、何をゴールとしているのか分からなかったけど、

“大学には行かない”と生まれて初めて両親に自分の意見をぶつけた。


ただひたすら、“平凡”のレールを外して、
自分で作った線路を走りたかった。


< 123 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop