Fall -誘拐-
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“ドラマチック”と“平凡”の境界線がもしあるとしたら、僕は完全に右の人間だった。
特殊とは程遠い一般家庭で育って、
甘酸っぱくもなく、
青くもない学生生活を送り、
将来は平凡な社会人になるんだろうなと・・・
もう自分が辿る人生のレールは敷かれているんだろうなと感じていた。
そんな高校1年のある日、
従兄弟の兄ちゃんが連れていってくれた松山千春のライブ。
1人でチケット握りしめて参加した吉田拓郎弾き語りコンサート。
受け身だった感受性が、
反旗を翻していくのを実感した。
気付けば・・溜めっぱなしでずっと使っていなかったお年玉貯金を下ろして、
楽器屋へ足を運んでいた。
叱られるまで近所の公園でずっと弦を弾いていた。
どこへ向かっていくのか、何をゴールとしているのか分からなかったけど、
“大学には行かない”と生まれて初めて両親に自分の意見をぶつけた。
ただひたすら、“平凡”のレールを外して、
自分で作った線路を走りたかった。