二人を繋ぐ愛の歌
そして引っ越し当日。
堀原に休みを調整してもらった陽人と一緒にまだ見ぬ新しいマンションに向かっていたのだが、沙弓はそのマンションの前でピタリと立ち止まった。

「……陽人、マンションってもしかしてここ?」

「もしかしなくてもここだけど、どうした?」

不思議そうに首を傾げる陽人のその後ろに見えるマンションは、最近出来たばかりで有名な超が付く程の高級マンションだった。
周りも緑があったり水があったりと緑に囲まれて癒されそうなのだけれど、一体一室いくらするのかと想像するだけで沙弓は血の気が引きそうになった。

「もう荷物届いてるはずだし、早く行こう」

「ちょっ、ちょっと待って!こんな高そうなマンションだって聞いてないっ!」

「んー?高層ってわけじゃないから高さは普通だと思うけど……沙弓って高いとこ苦手だっけ?」

「平気だけど……って、そっちの高さじゃなくてっ!!私、こんな家賃高いところ払えないよっ!」

陽人の腕を掴んでわりと真剣にそう訴えると陽人はキョトンとしてからすぐに目を細めて微笑んだ。

「沙弓と一緒に住みたいと思ってセキュリティがしっかりしてそうな所を選んだのは俺なんだから、そんなこと気にしなくていいよ」

「そんなわけにはいかないでしょ……。
それに、こんな芸能人が住んでそうな凄いマンションは敷居が高いっていうか」

「俺、一応れっきとした芸能人だからね?」

忘れてる?と言いながら苦笑し、痺れを切らしたらしい陽人に手を引かれた沙弓は気が重くなりながら足を何とか動かした。

エントランスに一歩足を踏み入れるとホテルのようなカウンターがあり、常在しているらしいコンシェルジュもいる。
呆気にとられながら動いても静かなエレベーターに乗せられ目的の階につくと、これから自分達が住む一室となるらしいドアの前に立たされた。
< 266 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop