二人を繋ぐ愛の歌
「いやだって、陽人君に彼女に会わせろって言っても“嫌”の一言で終わらされたからさー。
じゃあ仕事でいないときに勝手に会っちゃおうって思ったんだよね。
あ、【多幸】の弁当を指名配達すれば確実に沙弓ちゃんが来てくれるって教えてくれたのは勇菜ちゃんなんだけど、陽人君ってあのライブの後から勇菜ちゃんと沙弓ちゃんを会わせてないらしいね。
勇菜ちゃんが怒って“私の代わりに根掘り葉掘り聞いといてね!”って言ってたよ」

そう笑顔で話すのは拓也で、その止まることのないトークを沙弓は顔をひきつらせながら聞いていた。
そして、座らされたソファの目の前のテーブルに置いた配達してきた弁当に視線を落とし、どう言ったらいいのかと必死に考えていたら向かいに座っている陽菜が戸惑いがちに口を開いた。

「……あの、こんな時間に急にごめんなさい。
迷惑だったでしょう?」

「あ、いえ、驚きましたし、今も緊張してますけど……でも、迷惑ではないです」

これは本当のことだ。

付き合い始めたばかりの彼氏の両親にこんな形で突然会うことになるなんて全く予想していなかっただけにかなり驚いたし、斜め前に座っている勇人が未だに一言も発さないまま沙弓を見ているから余計に緊張している。
沙弓の言葉を聞いて陽菜は安心したように息をつくと、良かったぁ。と柔らかく微笑んだ。

「小動物……」

「え?」

「あ、すみません。
大分前に陽人にお母様のことを“小動物みたいな人”って言っていたのを思い出して……確かにその通りで可愛らしい方だなって……。
ごめんなさい、失礼でしたよね」

そう苦笑いしながら言うと陽菜達は驚いたように顔を見合わせていた。
何か変なことを言っただろうかと思っていると、拓也が再び沙弓に目を向けた。
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