二人を繋ぐ愛の歌
「え?今日はいつもの場所じゃないんですか?」

ある祝日の朝、配達の手伝いをするために【多幸】に行くと叔母にいつもと違う場所に配達に行くように頼まれた。
しかも、普段は何ヵ所も配達しなければいけないのに今日は一ヶ所だけ。

疑問に思っていると叔母が片手を頬に当てて首を傾げた。

「実は今日の配達は全部主人がリハビリがてら行く予定だったんだけど、一ヶ所だけ先方が沙弓ちゃんに届けてほしいって言ってきて……」

「……お弁当の配達人の指名なんて聞いたことないですよ?」

「うちも指名なんてしてないんだけどねー。
どうしても沙弓ちゃんがいいって言っててー」

叔母がのんびりと言うその近くで腰をゆっくり捻りながら体操している叔父に視線を移すと、目が合った瞬間にニカッと笑われた。

“頼んだ”とそう言う意味だと理解したが配達に使う【多幸】の車は一台しかない。
どうするのかと聞くと少し早めに叔父と共に配達用の車で店を出て、沙弓のマンションにある沙弓の車に弁当を乗せて配達に向かってほしいと言われた。

「いやぁ、沙弓が手伝ってくれて助かる!配達終わったらそのまま帰ってくれていいから頼んだぞ!」

にこにこと笑顔を向けてくる叔父に作り笑いにもならない引きつった笑みを浮かべると、沙弓は渡されたメモに書かれた配達先に視線を落とした。
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