冬の王子様の想い人
「氷室くんは雪が似合うね。目も雪雲みたいな色で、本当に全部綺麗」


無意識に口から言葉が滑り落ちた。


切れ長の目が大きく見開かれ、長めの黒髪に隠れていた耳がほんのり赤く染まる。その反応にハッとして、口にした台詞に慌ててしまう。


私、初対面の男子に一体なにを……!
これじゃ、ただの失礼なファンの女子生徒じゃない。


「……なに、言って……」

顎に触れる指にぐっと力が込められ、その強さに驚いて反発する。

「ちょ、ちょっと痛い!」
「勝手なこと言うな」

先程までの虚勢をつかれたような態度から一変して、冷淡に言い放つ。
睨みつける目には明らかな不快感が滲んでいる。

「ご、ごめん、でも嘘じゃないから。それに氷室くんを起こすように指示したのは楠本くんで……」

暴れだす鼓動を無視して言い返す声は、情けないくらいに震えている。


なにが冬の王子様よ、こんなのただの暴君王子様でしょ……!


指を振り払うために身じろぎしてもがくと彼の両腕が唐突に背中にまわる。硬い胸にトンと頬が当たり、一気に身体が強張った。


「な、なにっ」


抱きしめられているような体勢に焦る。
腹が立っているのに、鼓動がドクンドクンと速いリズムを刻む。


細身なのに、シャツ越しに触れる身体はとてもガッシリしていた。


行き場のなくなった手で胸元を叩くけれど、拘束は緩まない。力の差は歴然で、頬にカッと熱が集まる。
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