冬の王子様の想い人
葉山さんは唇をギュッと噛みしめて私を睨む。

「好きになったのは最近なんでしょ? なにが好きなの? 外見? 賢い頭脳? ナナちゃんに雪華くんのなにがわかるの? 私は小さい頃からずっと知ってるのよ?」

畳みかけるように言われてどう返事をしていいのかわからなくなる。その鬼気迫る勢いには畏怖さえ感じる。

同時に本気で彼を好きなのだという気持ちも伝わってくる。


「……それでも、好きなの。全部が、好き」


できる返事はこれしかない。過ごした時間もなにもかも、葉山さんに勝るものはない。


たったひとつ、彼への想いを除いては。


出会った時は、苦手だった。とびきりの美形だけど、冷淡で強引で人の話を聞かない勝手な人だと思った。
皆が惹かれる気持ちが理解できなかった。


それなのに。


誰よりも心配性で温かな心に触れて、一途にナツさんを想う気持ちを知って。
裏表のない真っ直ぐな優しさを向けられて、気づいた時には恋をしていた。



雪華についてはきっと、知らない事柄のほうが多い。好きな色や食べ物といった些細な事柄から将来の夢といった未来の目標もなにも知らない。


それでも。



名前を呼んでくれる甘やかな声、髪を撫でてくれる優しい手、抱きしめてくれる腕の力強さを知っている。



胸を締めつける切なさは雪華への際限ない想いを物語る。



この恋を手離したくない。手離すなんてできない。



「ふうん。どうあっても別れる気はないんだ?」

大きな目を細めて問われ、頷くとイラ立だし気な表情を向けられる。


「いいわ、それなら私がナツだって言うから! それでふられても恨まないでね?」

勝ち誇ったように宣言して、これまでのように可愛らしく口角を引き上げる。


その自信に満ち溢れた態度がほんの少し羨ましい。
< 122 / 154 >

この作品をシェア

pagetop