冬の王子様の想い人
「へえ、噂は本当だったのねえ。冬の王子様に唯一無二のお姫様ができたって」

千田先生がバインダーを片手にベッドサイドにやってきて言う。


「ええと、原口さん、だよね。ちょっと見せてね?」

先生に幾つか質問をされる。

「軽い貧血と睡眠不足かな。あまり顔色もよくないし、しばらく休んでいきなさい。普通科は午後はホームルームだけでしょ?」
「あの、先生、どうして私の名前を知っているんですか?」

名乗っていないし、今まで保健室を利用した記憶もほとんどないのになぜだろう。


「有名だからね。王子様に恋人ができたって、今朝から何人もの女子生徒に聞いたわよ。あなたの名前やらクラスやら教えてくれるから、もう覚えちゃったわ。あの子たちったら、王子様ロスとか言って嘆いてたわよ」

明るい茶色のショートカットをかき上げながらあっけらかんと言い放つ千田先生。


「それに今まで必要以上に女子生徒と接触してこなかった氷室くんが大事に抱えてくるくらいだもの。噂のお姫様に間違いないと思ったの。今もずっと手を繋いでるしねえ」

そう言って私たちの繋がれた手に視線を落とす。指摘された瞬間、羞恥に居たたまれなくなる。
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