冬の王子様の想い人
昼休みになり、校舎一階の用務員室の前に向かうとやはりふたりはまだ来ていなかった。

段取りについては事前に聞いていたので、迷わず作業にとりかかる。


「おじさん、こんにちは」

開けっ放しになっていた用務員室の扉を覗き込み、声をかけた。


七十代半ばの用務員の小山内(おさない)さんは温和な男性で生徒にとても親切だ。

委員補佐になり、施設清掃の件で教えてもらう機会も多い今ではすっかり顔見知りになった。


「おや、七海ちゃん。あの子たちの手伝いかい? 道具が届いているよ」

奥からゆっくり出てきた小山内さんは目尻の皺をさらに深くして教えてくれる。雪華と楠本くんとは以前からの知り合いらしい。


用務員室近くの庭に置かれていた箒を各クラスごとに分類する。各クラスの代表には各担任の先生を通じて配布時間を伝えてある。

箒は意外に柄の部分が長く扱いにくい。小山内さんが手伝ってくれたおかげでなんとか時間までに準備を終え、安堵した。

配布時間になるとパラパラと委員がやって来た。一通りの説明をしつつ、渡していく。


「ねえ、私たち代理なんだけど、委員長たちはいないの?」

背後から声をかけられて振り返ると、女子生徒がふたり立っていた。


ひとりは背中半分くらいまでの長さの茶色い髪にきつめのアイラインをひいている。

もうひとりはベリーショートヘアが涼し気で、半袖シャツに制ベストを着ていた。

ネクタイからこのふたりが三年生だとわかった。
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