冬の王子様の想い人
「大袈裟ね。でもこの周辺の公園は既に氷室くんが調べたんでしょ?」

梨乃が弁当箱を片付けながら怪訝そうに問う。


「そうだけど、見落としているかもしれないでしょ」
「本気なの? ナツさんが見つかって一番辛い思いをするのはナナよ? それなのに捜すの?」

心配してくれる気持ちがひしひしと伝わってくる。


ナツさんが見つかったら、今みたいな距離感では過ごせないし、気持ちが向けられる可能性もほぼないとわかっている。

「……うん、捜す。協力するって約束したから。……それにナツさんが見つからないと私たちの関係ははっきり変わらない、変えられない気がするの」


今のままでは前に進めない。


このままじゃずっと彼の心の中のナツさんに敵わないし、ずっと怯えてしまう。今、気持ちを告白しても私は選んでもらえないだろう。

ふたりが再会しなければ、本当の意味で向き合ってもらえない気がする。そもそも私たちの出会いのきっかけはナツさんの言葉なのだから。


今の私はどこかナツさんの身代わりというか、似ている存在なだけなのだ。

大事に想ってくれるのは自身の思い出を重ねているから。


その事実に気づいた時、雪華に問いかけようとしたけれどできなかった。

言葉にするとこの関係が壊れてしまいそうで、隣にいられる時間を失いそうで恐かったから。


「ナツさんを見つけて、それからきちんと告白したいの。私自身を見てほしいの」

ギュッと手を握りしめ、小さな声で呟く。
無駄な行動かもしれない。でもなにかせずにはいられない。


「ナナは本当に馬鹿正直で不器用よね。この機会を利用して恋人になる、とか思わずに自分から貧乏くじをひきにいくんだから」
「……だって、そんな状態で恋人になっても不安なだけだもん」

拗ねたように反論すると、弁当箱を制バッグに戻した梨乃が私の頭をぽんと撫でた。

「その真っ直ぐさがナナのいいところ」


雪華がナツさんを選んだその時は、覚悟を決めてもう一度片想いを始めるつもりだ。
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