溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
昼休憩中、十階にある院内カフェ&レストランで一人、ランチをしていた。なかなかハードな日だけど、なんとか仕事を一区切りさせてこうしてランチにありつくことができた。
「お疲れー、ここいい?」
そこへ救急外来で働く同期の看護師の峰 爽子が、うんともすんとも返事をしない私の前にサラダが乗ったトレイを勢いよく置く。
そしてさっと座ると手早くさっさと食べ始めた。
爽子はとても美人で、純黒の触り心地がよさそうな髪の毛が大和撫子を思わせる。まさに和装の似合う美人。仕草や姿勢も綺麗で、育ちの良さが端々から滲み出ている。
どうやら名家のお嬢様らしい。
性格はかなりサバサバしていて、少々のことではめげないタイプの彼女。生きるか死ぬかの瀬戸際にいる患者さんを相手に、日々奮闘している仲のよい同期である。
「相変わらず忙しそうだね」
「まぁね。立て続けに救急車が三台と、安定していた患者さんの急変が重なって大変だったよ」
殺伐としている救急外来で毎日揉まれてきたせいなのか、爽子はとても凛々しくなった。
新人の頃はよく一緒にご飯を食べたり、休日には買い物や映画を観に行ったり、飲みに行ったりして、挫けそうになる気持ちをお互いに吐露し、励まし合ってストレスを発散していたっけ。
何人かいた仲の良い同期たちは、次々と結婚が決まって寿退職してしまった。
仲のよいメンバーで残ったのが私と爽子である。