溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
胃がキュッと締めつけられて、胸をキツく圧迫している。さっき食べたものがせり上がってくるような感覚だ。
ドアの前にくると、一度大きく息を吸って鼓動を落ち着かせようと試みた。
それもあまり効果はなく、ドアをノックしようと伸ばした手の震えが止まらない。
──コンコン
「入りたまえ」
遠慮がちにノックすると、すぐに中から返事があった。
「し、失礼します」
広い室内は廊下と同じようにすみれ色の絨毯が敷かれていた。観葉植物の鉢植えに、さらには壁一面に大きな風景画が掛けられている。
ガラス張りの窓のそばのデスクのそばに、白衣を羽織った院長が腕組みしながら立っていた。
さらには来客用のソファーと椅子とテーブルがあり、驚いたのはそこに人が座っていたから。
「日下部くんだな?」
「は、はい」
「入ってそこに座りなさい」
どことなく鋭い目つきに思わず萎縮して顔が強張る。ピリッとした室内の空気は、これから悪いことが起こるという前ぶれだろうか。
明らかに歓迎されている雰囲気ではないことが一瞬で見てとれた。
一歩一歩足を踏み入れるたびに、逃げ出したい気持ちに駆られる。
「失礼、します」
小さくペコリと頭を下げながらソファーに腰を下ろした。
向かい側から視線を感じたけれど、あまり見るのも失礼かと思い、あちこちへと視線を飛ばしてキョロキョロする。