溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜

恋人、か。

爽子と同じようにこの四年間は仕事一筋だった私だけど、爽子のように仕事だけをして過ごしてきたわけではない。

私には、二十一歳のときに付き合った恋人がいた。

元彼、宮本(みやもと)(すぐる)は容姿端麗、頭脳明晰、品行方正で、クールな見た目とちがって笑顔がかわいらしい人だった。

出会いは大学二年生の終わりに、たまたま入った英会話教室で隣の席にいたのが彼だった。

明るく社交的で話題に富み、人を笑わせるのが上手。誰にでも分け隔てなく優しい彼は、英会話教室でも男女問わず人気があった。

最初はただ挨拶を交わすだけの顔見知り程度の仲だったけれど、優の持ち前の明るさと優しい笑顔、さらには流れるようにきれいに紡がれる英会話に魅了されて、私はひそかに憧れ、恋心を抱くようになった。

穏やかな人柄と優しい笑顔に、恋心は募るばかり。

そんな優に英会話のポイントやコツを聞いているうちに、次第に打ち解け、お互いのプライベートを話すようになった。

優は都内でも有名な経営学部に通っている優等生で、ゆくゆくは父親の会社を継いで跡取りになるということ。

聞けば彼の父親は、日本でも屈指の大手医療機器メーカー《MIYAMO》の社長だった。

医療業界に携わる人なら知らない人はいないほどの知名度の大企業で、実際私が働く帝都大でも彼の会社の医療機器が多数使用されていた。

日本の病院の大半は《MIYAMO》の医療機器を使用していると言っても過言ではないほど、高い性能と進化し続ける技術を誇っている。

今の今まで事故など一度も起きたことがないのが、最大のウリだと言っていた。

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