溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
『柊製薬といったら、東証一部上場企業で社会的信頼もあるし、MIYAMOのさらなる事業拡大のためには願ってもいないお相手でしょうね』
『政略結婚ってやつなのかしら。どちらにしろ、私たちには縁のない話だわ』
たまたまロッカールームでそんな話を聞いてしまい、頭をなにかで殴られたかのような衝撃が走った。
ドクドクと心臓が激しく高鳴って、全身にじわじわと嫌な汗が浮かんでくる。
いったい、どういうこと……?
わけがわからないままフラフラとロッカールームを飛び出し、向かったのはオフィス街の中にあるMIYAMOの本社。
そんなはずはない。優に婚約者がいるなんて、信じられない。自分の目と耳で確かめないことには、信憑性に欠ける。
信じてはいたけれど、優との付き合いはどこか腑に落ちない部分もあって、真相を知るのが怖いという思いもあった。
基本土日の休みの日には連絡をしても繋がらなくて、会うのもいつも平日ばかり。一日中一緒に過ごすデートというものをしたことがない。
記念日やイベントだって、仕事が忙しいと言われて会ってもらえず、寂しい思いを抱えながらひとりで過ごしてきた。
一緒にいて楽しいのは事実だったけれど、どこか無理をして彼に合わせているところもあったというのが正直な感想だ。