溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「さっきも言ったが、俺は柚と共に人生を歩んでいきたいと思ってる」
「そ、それは、私もです」
「なら、問題はないな」
そう言って微笑むと、覚悟を決めたようにしっかりとした足取りで会場の中へと進む。中にはたくさんの取材陣もいて、カメラやアナウンサーが隅っこの方で待機していた。
立食形式のビュッフェが展開されており、楽しそうに歓談する声があちこちから聞こえる。私はついキョロキョロしてしまい、今までにない緊張感でいっぱいだった。
「あれ? 篠宮先生じゃないですか」
こちらに向かってにこやかに会釈しながら近づいてくるひとりの中年男性。もちろんだけれど、私の知らない人だ。
利発そうなキリッとした濃い眉毛が特徴的で、口元は笑っているけれどその眼光は鋭く光っている。
「これはこれは、宮本さん。こんにちは」
どうしてだろう、修さんの声はどことなく冷ややかだ。
「どうなさったんですか、こんなところで」
「父が経営するこのホテルのお祝いに伺ったんです」
「ええ?」
「父にまだ挨拶が済んでないので、失礼します」
驚きのあまり目を見開きながら固まる男性をよそに、修さんは私の手を引いた。