溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
基本的に穏やかで人当たりのいい修さんの対応とは思えなかった。それを問うこともできずに、会場のさらに奥へと進んで行く。
一段と大きな人だかりができている輪の前で、ようやく修さんは足を止めた。慣れないヒールだったこともあり、足元がよろけてすぐ前にいたスーツ姿の男性にぶつかる。
「す、すみません」
「いえいえ、って、柚ちゃん?」
とっさに頭を下げた私だったけれど、名前を呼ばれたことに驚きつい顔を上げた。目鼻立ちの整った素敵な男性。まるで王子様のようなダークブラウンの肩までの長髪がよく似合っている。
「ど、どちら様ですか?」
目を細めてまじまじと見つめてみても、こんな素敵な人に見覚えはない。声はなんとなくどこかで聞いたことがあるような気がするけれど、はっきりとは思い出せなかった。
するとその男性は楽しげにクスッと笑い、私の耳元に顔を寄せた。
「やーねぇ、あたしよ、あたし!」
「え? ええっ!?」
雄叫びに近い大きな声が出てしまい、私はとっさに自分で自分の口を覆う。
「兄貴、なにやってるんだよ。近づきすぎだ」
隣にいた修さんが未だに私に顔を寄せる拓さんにムッとして、首根っこを掴んで引き離す。