溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
私は頬を引きつらせながら、真っ白になりそうな頭を必死に奮い立たせた。この人が拓さんだなんて信じられない。
男性としても女性としても完璧でそつがなく、あのときは女らしかった仕草も、今はスマートに決めて紳士を装っている。
「うまくいったのか? よかったな、修」
ニッコリ微笑む顔は本物の王子様のようで、拓さんの周りを取り囲んでいた女性たちがうっとりと頬を染めている。
す、すごい、口調までちがうんだ。よくここまで完璧に演じられるよね。いったい、どっちが本当の拓さんなんだろう。
「柚ちゃん、固まりすぎだから。リラックスしてリラックス」
「は、はい」
深呼吸をして鼓動を落ち着かせる。
「ふたりがくっついてくれて、俺も嬉しいよ。柚ちゃん、修をよろしくね」
目ざとく左手の薬指のエンゲージリングを見つけた拓さんが、艶っぽく微笑む。その笑顔は修さんによく似ていて、ふたりはやっぱり兄弟なのだと思わされた。
スラッとしたモデル体型に気品あふれる出で立ち。品行方正なこのふたりには、一般人とはちがうオーラが漂っている。
ふたりが並んでいるととても絵になり、まるで雑誌の中の一ページを切り取ったような光景がそこにはあった。