溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「どうしたんだ? 騒がしい」
「父さん、修が婚約者を連れてきたんだよ」
「婚約者?」
ギョッとして目の前の男性を見上げる。白髪混じりの強面の男性と目が合い心臓が飛び跳ねた。
この人がShino Hotelの経営者で、修さんの父親なのか。三人並ぶと背格好や体格もそっくりで、見定められるような視線に背筋がピンと伸びる。
「は、初めまして、日下部 柚と申します」
「修、どういうことだ。説明しろ」
ニコリともしてくれなくて、私の挨拶は華麗にスルーされた。なんだか少し、いや、かなり不機嫌そうだし、もしかして私は歓迎されていないのかな。
「俺の婚約者だよ。彼女以外の女性と結婚する気はない。生涯で心から愛したたったひとりの女性だ」
歯の浮くようなセリフに顔から湯気が出そうになる。どうしてこうさらっと、親の前ですごいことが言えるのだろう。
「幸せにしたいのも、柚だけだ」
そう言われて、さらに赤くなる。隣で拓さんがおかしそうに笑いながら「言うねぇ」と囁く。
「そうか、なら俺はなにも言わない。柚さん、こいつは言い出したら親の言うことなんて聞かない頑固者だ。大変なこともあるかと思うが、どうか支えてやってください」