溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
そもそも私、オッケーしたわけじゃありませんけど。むしろ嫌だとお断りしましたよね。
それなのに目の前の篠宮先生の行動は、私の想像の範疇を遥かに越えている。
外で待ち伏せするなんて、私が不審がるとは一切思っていないらしい。車から顔を覗かせる篠宮先生は、穏やかな笑みだ。
「俺、腹減ったんだよね。これから付き合ってくれないかな?」
「わ、私はお腹など空いてませんから──」
強気で言い返したところに、胃が盛大に空腹を告げる。どうやらそれはしっかりと彼の耳にも届いたようで、クスッと笑われカーッと体が熱くなった。
「体は正直だな。美味しいイタリアンの店を知ってるんだ」
乗れと言わんばかりに開かれた助手席のドア。篠宮先生はきっと、私がなにを言っても聞き入れないだろう。
現にさっきだってはっきり断ったにも関わらず、こうして私の元へとやってきているのだ。
こうなったら一度ちゃんと話して、はっきりきっぱり断ろう。そうすれば、篠宮先生だってわかってくれる。
ここで断っても、きっと、ううん、絶対に、私が話を聞くまでは何度でも言い寄ってくるだろう。今日の行動でそう思わされた。簡単にあしらうだけじゃダメだ。まったく聞く耳を持ってくれない。
ここまで強引な人だとは思わなかった。