溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「朝のことですが」
「よし、着いた」
ウインカーを出したかと思うと、車が右折してお店の駐車場へと乗り上げた。ちょうど一台分だけ空きがあり、車はバックで駐車場へとホールドする。
爽やかな外見に凛々しい横顔。
グレーのジャケットとストライプ柄のシャツ姿の篠宮先生の私服は、雰囲気や容姿に負けず劣らずおしゃれでよく似合っている。
一点一点が選び抜かれた高級な素材でできていて、ファッションビルのバーゲンで買った私のものとはわけがちがう調度品だ。
「とりあえず先に腹ごしらえだ。話ならその後で聞こう」
私がなにを言おうとしているのか察したらしい篠宮先生は、手早くシートベルトを外すとさっさと車を降りる。
なかなか外れないシートベルトと格闘していると、助手席側のドアがゆっくり開いた。
「なんだ、外れないのか?」
「あ、いや……」
私がモタモタしているのを見て、スッと屈んで身を寄せる。そして長い腕を伸ばしながら、上半身を低くして乗り込んできた。
ヒョイと伸びてきた手が私の手に重なり、力強くベルトを外すボタンが押された。
胸を圧迫していた締めつけはなくなったはずなのに、どうしてだろう、目の前にある篠宮先生の横顔に胸がざわつく。