溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜

「さぁ、行こう」

差し出された手を見て、戸惑うことしかできない。どうすればいいかわからなくて篠宮先生の目を見つめていると「ほら」と急かされてしまった。

おずおず差し出した手を逆に掴まれ、手を引かれながら車を降りる。

篠宮先生は私の隣にピタッと寄り添うと、ごく自然な手つきで腰に手を回してきた。その仕草に驚いてとっさに離れたけれど、彼はクスリと笑うだけだった。

今までこんなふうにエスコートされたこともなければ、お姫様扱いをされたこともない。違和感なく自然にそれをやってのける篠宮先生は、間違いなく女性の扱いに長けている。

「いらっしゃいませ、篠宮様」

自動ドアではなく、中から引き戸が開いて支配人のような蝶ネクタイ姿の短髪の男性が出迎えてくれた。

海沿いに似つかわしくない、洋館をイメージしたような中世のヨーロッパを思わせるようなレンガ造りの店構え。

駐車場に停まっている車はどれも高級車ばかりだったので、もしかするとと思いきや、中もおしゃれで高級感に溢れていた。

テーブルや椅子、小物などのアンティークはどれも高級だけれど嫌味がなく、シックな店内を引き立たせるのにいい仕事をしている。

夕飯時だというのにどこか落ち着いた様子の店内に入ると、別世界にでも迷い込んだかのような錯覚に陥った。

高い天井から伸びる豪華なシャンデリア。

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