溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
男性はこの場にふさわしいスーツかタキシード。
丸テーブルを囲んで座るお客さんは皆華やかで、男性はこの場にふさわしいスーツかタキシード。
女性はワイングラス片手に気品高く微笑んでいるドレッシーで素敵な人ばかりだ。
花柄の刺繍が入ったワンピースを着てはいるものの、とてもじゃないけどフォーマルとは程遠いカジュアルなものだ。
恥ずかしくて肩を縮めながら歩く私に、心なしか視線が向けられているようで居た堪れない。
それでも支配人さんは穏やかに案内してくれる。お店の中を歩かされ、テーブル席ではないどこか。ずいぶん奥までやってきたような気がするけれど。
「こちらでございます」
支配人さんが重い扉を両手で押し開けたその先には、モダンな広い室内があった。
そこには食事用のテーブルと椅子、ロッキングチェアが二脚、ソファや丸テーブルまで置いてある素敵な空間が広がっていた。
目を瞬かせて、固まることしかできない。
普通のお店じゃないことは理解していたけれど、まさかこんなにすごいなんて。
テーブル席に案内されなかったということは、少なからず篠宮先生は特別待遇なのだろうか。
「VIPルームでございます。ゆっくりお寛ぎ下さいませ」
VIP、ルーム……。
トロント大出身のエリートドクター。そんな篠宮先生なら、VIPルームに案内されることも頷ける。
でもまさか、ここまで別世界だったとは思いもしなかった。